フランクのソナタをチェロで弾く時の3つのポイント

2018年にフランクのソナタをチェロと弾く機会があり、その時にピアノパートに音域アレンジを施しました。2020年にその楽譜の出版をするにあたり、チェロパートも改めて版を比較・精査する事になりました。

その中で整理したいくつかのポイントをお話ししてみたいと思います。

チェロ版はいくつか出版されていますが、初版のDelsart氏のアレンジが広く知られ、それを踏襲しているものが殆どです。

確かに名案!と思われるアレンジ箇所も多い反面、ピアニストやヴァイオリニストにとって、聴いていると「変だな」と気になる箇所がいくつかあります。

また、チェロパート譜の制作過程で意図せず元のヴァイオリンパート譜とは違うアーティキュレーションが書き込まれてしまったと思われる部分もあります。

これらについて1つずつ見て行きたいと思います。

こちらは第1楽章の12小節目からの引用です:

15小節目の冒頭、上のソ♯がDelsart版の音、下の「Ossia」とある音が私が提案したい変更です。

Delsart編曲のまま弾かれると「突然なに!?」と驚いてしまいます。なぜそうなるのでしょうか。

人は音楽専門教育を受けると、とかく短い区間(モチーフ単位)での音型を原曲に忠実にしようとしがちです。上のソ♯にする事で、次のラ♯との間の7度の音程比は確かに原曲通りに保たれています。

しかし、13小節目からの流れを見てみると、3回目のソ♯だけが1オクターブ高いことは聴く者の耳には衝撃的です。そしてこの高いソ♯はさらに、次の17-20小節のフレーズのハイライトである17小節目のソ♯への上行の高揚感を奪ってしまいます。だから聴いていて「変!」なのです。

(2つ目以降のポイントも後ほど書きますね、すみません)